太田述正コラム#0270(2004.2.25)
<旧日本領からの移民受け入れの是非(その1)>

 この数日、旧日本帝国領域の住民の日本移住を無条件で認めるべきだとした私の主張に多方面からご批判をいただいています。
 この論議が私のホームページの掲示板だけでなく、一部他のサイトでも取り上げられたことと、コラム読者の中には掲示板までご覧になっていない方がおられること、更には掲示板がパンク状態であることから、これまでの議論を二回に分けてコラムとしてお送りすることにしました。その際、最低限の加筆訂正を私以外の投稿者の文章についても施している場合があることをお断りしておきます。

<読者A>
韓国では剣道や侍、日本刀などありとあらゆる日本の文化の起源が韓国である、と一部の知識人によって脆弱な根拠に基づいて主張され、それが信じ込まれ、世界に発信されていると聞きます。自国にオリジナルのものが少ないからか、自国の評判をあげるためにこういう行為が行われるのかどうかは分かりませんが、日本文化の歴史、起源などを歪めるあからさまな起源捏造の数々が行われていることを見過ごすことはできません。日本を見下しながら、一方で日本文化の素晴らしさを認めるかのようなこの行為、複雑な韓国人の心理が見受けられます。私達日本人はどう対処してゆくべきなのでしょうか?

<太田>
まず、韓国とのあらゆる障壁の撤廃に向け、努力を続けることでしょう。
自由貿易協定(FTA)の締結、韓国の日本文化流入規制の完全撤廃等です。
また、私は、朝鮮半島を含む旧日本帝国領域の住民には、無条件で日本に移住する権利を与えるべきだと考えています。(これは、小子化に伴う日本の生産人口縮小を少しでも食い止めることにもなるでしょう。)

その一方で、日本列島と朝鮮半島が共有する歴史や、両地域のプラスの交流の歴史に焦点をあてた日韓の学者の歴史研究に両国の民間の財団等がが補助金を出すことが望ましいと思います。

他の読者の方々のご意見もお聞きしたいものです。

<読者B>
>また、私は、朝鮮半島を含む旧日本帝国領域の住民には、無条件で日本に移住する権利を与え>るべきだと考えています。(これは、小子化に伴う日本の生産人口縮小を少しでも食い止め>ることにもなるでしょう。)

工エエェ(´д`)ェエエ工
ちょっとコラム見た限りじゃまともそうだと思ったのにそうでもないのか。

<読者C>
かの国を分かってそうで分かってない。
ってことだろ。

<読者B>
移住すれば税金も保険料も払うはずと思っている時点で、認識不足。税金、保険料払わないで、年とったら年金だけ要求してくる、というのが健全な常識だねぃ。
あと、治安維持コストも上がるしね。
実はおれも3年前同じことを考えてました。
今では当時の認識不足を恥じています…

<読者C>
痛いなんてもんじゃな、ただの馬鹿だろこいつ。
>なお、民主党にはいまだに安全保障政策がありません                 これでどう支持しろと?
>また、私は、朝鮮半島を含む旧日本帝国領域の住民には、無条件で日本に移住する権利を与えるべき 
だと。こんな妄想といい、どうしようもねえ馬鹿じゃん。
<読者B>
確かに。
半島人の観察は的外れでもないと思うのだけれど、なんでこんな斜め上な結論になってしまうのだろー。
左翼フィルターが強烈なんかな。
この世代(決めつけてしまうが)は何を見ても洗脳から立ち直れんのかの??。

<読者C>
この人、某国の工作員なのかもしれないよ。
>朝鮮半島を含む旧日本帝国領域の住民
こういう表現なら、朝鮮シンパだと思われないし、右翼の日本人も支持してくれるかもしれないしね。
日本に移住ね。これはただの侵略ですよ。
<太田>
http://ex2.2ch.net/test/read.cgi/korea/1070059782/l50で展開されている私の「移住」案への批判<は>面白いですねえ。
<この批判>についてですが、
1 「韓国人」「在日」といった、十把ひとからげの議論はやめましょう。「差別」はそこから始まりす。
2 どうせ喧嘩するなら、「小国」韓国や北朝鮮でなく、「大国」中共、特に「超大国」米国相手に喧嘩しましょう。私のように(これは余計か)。
3 日本の安全保障に関心を持ちましょう。日本の生産人口の減少は由々しい問題です。ブラジルから「日系」人を連れてくるくらいなら、台湾人、朝鮮半島の人々を受け入れましょう。第一、移民をきちんと受け入れなければ、不法入国者(好ましからざる人物が多い)の跳梁を許すばかりですよ。

<読者D>
日本には無駄な仕事がかなりありますよね?国会議員をはじめとする議員も人数が多すぎるようですし、建設業も就業人口が多すぎるように思います。流通業もむやみに複雑で、人を減らしてスリム化をはかる必要があると思います。ほんとうに役所も企業も必要のない部署や人が多すぎると思うのです。もし、生産人口がこのままで、日本のあらゆる無駄を取り除いたら、失業する人が大量に発生して大問題になります。そのように考えると、生産人口の減少というのは、効率化・スリム化をはかる上でとても都合がいいことだと思うのですがどうでしょうか?

>3 日本の安全保障に関心を持ちましょう。日本の生> 産人口の減少は由々しい問題です。ブラジルから「日系」人を連れてくるくらいなら、台湾人、朝鮮半島の人々を受け入れましょう。第一、移民をきちんと受け入れなければ、不法入国者(好ましからざる人物が多い)の跳梁を許すばかりですよ。

上記のように考えると、生産人口の減少による不法入国者の増加は、日本が無駄な社会構造を維持するために起こる問題だと思いますので、安全保障とは直接の関係はないようにかんじます。

<太田>
日本の大幅な移民受け入れの必要性については、既に経団連と国連(だったと思います)が指摘しています。一般市民のレベルでも早晩それが常識になることでしょう。いずれきちんと議論をしたいと思います。

また、日本の人口構成が高齢者に偏った姿になり、しかもどんどん人口が減っていくということは日本の安全保障上の危機だと私が考えているのも、ごく当たり前の話だと思いますが、これについても改めて議論をしましょう。

もう一点申し上げておきます。
私は、エジプトのカイロ、カリフォルニア、ロンドンと何度もmulti-ethnic社会・・いまや、日本や韓国等を除いて世界中がそうなりつつある・・での生活体験があり、そのような社会の抱える問題についても十分承知していますが、他方、戦後日本が余りに均質な社会となったがゆえに金太郎飴的発想しかできなくなっていることも深刻な問題だと思っています。
私のもともとの専門分野の安全保障に即して申し上げれば、戦後日本において、自民党も社会党も、そしてこの両党に投票する有権者もことごとく、ニュアンスの差こそあれ、吉田ドクトリン的発想に染まったまま現在に至っていることがそのいい例です。
そもそも安全保障感覚というものは、人間みな必ずしも同じでない、故に殺し合うほどの紛争が生起する危険性が常にある、という認識がないところでは身につかないのだと思います。
戦後日本が、独創的な人文・社会科学を生み出していないのも同じ理由からだと思います。
私は、そんな日本はきらいです。
しかも、不法滞在者の犯罪によって、均質社会であるが故のとりえの一つであった治安の良さも急速に失われつつあることを思い出してください。

最後に、投稿子が指摘しておられる、日本の公的セクターと私的セクターの構造改革の必要性については私も全く同感です。しかし、だからといって、人口構成と人口の変化の問題を無視してもよいということにはなりません。
なお、日本の(地方公務員も合わせた)公務員の総人口比は、OECD加盟国の中で最低の部類に属することもお忘れなく。

<読者D>
> 日本の大幅な移民受け入れの必要性については、既に経団連と国連(だったと思います)が指摘しています。

経団連と国連は彼らの都合で発言しているだけで、日本という国家の都合を考えて発言しているわけではないと思います。ですから、彼らの考えを、自らの主張の正当性の理由とする(しているように見える)太田さんの発言は、日本という国の立場からのもの、とは考えにくいと思います。

> 他方、戦後日本が余りに均質な社会となったがゆえに金太郎飴的発想しかできなくなっていることも深刻な問題だと思っています。

外国人と比較して日本人が金太郎飴的発想しかできないとおっしゃっているのですか?私は、発想は個人の資質だと思います(日本人にも色々な人がいますよ)。

> しかも、不法滞在者の犯罪によって、均質社会であるが故のとりえの一つであった治安の良さも急速に失われつつあることを思い出してください。

不法滞在者の犯罪増加と日本が移民を受け入れることの是非とどう関連するのでしょうか?日本が移民を受け入れていないから、不法滞在者がいるということですか?それとも不法滞在者をなくすために、日本は移民を受け入れた方がよいということですか?

> 最後に、投稿子が指摘しておられる、日本の公的セクターと私的セクターの構造改革の必要性については私も全く同感です。しかし、だからといって、人口構成と人口の変化の問題を無視してもよいということにはなりません。

民と官の構造改革を進めると、少ない就業人口で現在レベルの経済活動を維持できるのでは?、というのが私の考えです。別の言い方をすれば、改革を進めると人手が余るから、移民を受け入れても彼らにしてもらう仕事はなくなるのでは?ということなのです。

> なお、日本の(地方公務員も合わせた)公務員の総人口比は、OECD加盟国の中で最低の部類に属することもお忘れなく。

この発言から、日本以外のOECD加盟国は、日本以上の無駄な構造を抱えている、という考えを導き出すこともできます。もし、「公務員の人口比が他国と比較して最低だから、日本は他国よりも公務員を効率的に運用している」と考えているなら、それこそ、太田さんの言われるところの「金太郎飴的発想」ではないでしょうか?

<太田>
>経団連と国連は彼らの都合で発言しているだけで、日本という国家の都合を考えて発言しているわけではないと思います。ですから、彼らの考えを、自らの主張の正当性の理由とする(しているように見える)太田さんの発言は、日本という国の立場からのもの、とは考えにくいと思います。

日本は成熟した民主主義国家です。また、日本の市民の大部分は、日本が国際社会の希望を無視して行動するわけにはいかないことも自覚していると思います。
経団連と国連(こちらはちょっと記憶が正確ではないのですが)は、それぞれ日本の世論と世界の声の有力な代弁者の一つです。
日本の市民の多くが自分自身の利害と上記等の意見に照らして、早晩、常識的な結論に達するだろう・・そのことを希望している・・ということです。

>外国人と比較して日本人が金太郎飴的発想しかできないとおっしゃっているのですか?私は、発想は個人の資質だと思います(日本人にも色々な人がいますよ)。

人間は環境の産物でもあります。
蛇足ながら具体例を一つあげておきます。
アラブ社会は、おしなべて専制的支配の下にあり、経済は停滞しています。アラブ社会の中で個人がその個性を活かして活躍することは極めて困難です。

>不法滞在者の犯罪増加と日本が移民を受け入れることの是非とどう関連するのでしょうか?日本が移民を受け入れていないから、不法滞在者がいるということですか?それとも不法滞在者をなくすために、日本は移民を受け入れた方がよいということですか?

移民大量受け入れに伴うコスト(例えば犯罪の増加)は、それほどではないかもしれない、ということです。良貨は悪貨を駆逐するからです。

>民と官の構造改革を進めると、少ない就業人口で現在レベルの経済活動を維持できるのでは?、というのが私の考えです。別の言い方をすれば、改革を進めると人手が余るから、移民を受け入れても彼らにしてもらう仕事はなくなるのでは?ということなのです。

おっしゃっている意味はもちろん分かっています。
質(例えば生産性)を上げることと量(例えば販売高)の維持・拡大を図ることとの兼ね合いの問題です。一方だけでいいというわけにはいきません。
 しかも移民の大量受け入れは、日本の人的資源を量的に維持(或いは減少傾向を緩和する)することに資するだけでなく、その質的向上にも資する(金太郎飴的発想がなくなる)、という点が重要です。

><公務員の総人口比が日本より多い>日本以外のOECD加盟国は、日本以上の無駄な構造を抱えている、という考えを導き出すこともできます。もし、「公務員の人口比が他国と比較して最低だから、日本は他国よりも公務員を効率的に運用している」と考えているなら、それこそ、太田さんの言われるところの「金太郎飴的発想」ではないでしょうか?

これは絶対論と相対論の兼ね合いの問題です。

総じて投稿子に申し上げたいことは、バランスのとれた、総合的な物の見方をしてください、ということです。

<読者E>
この件については、残念ながら太田さんの言われる移民導入には、反対させて頂きます。現在の日本の人口ピラミッドを考えれば、確かに将来の労働力不足を心配される気持は良くわかります。

ただ、移民受け入れは最後の手段ではないでしょうか。それ以前にやらなければならない対策が数多く残っています。また、移民受け入れのコストについては将来非常に大きなものになる可能性が高く安易な受け入れには反対です。70年代??80年代に多くの移民を受け入れた欧州を見れば明らかです。太田さんの主張される移民の間で良貨が悪貨を駆逐する現象は起こっていない様に思います。
逆に一度移民を大規模に受け入れ入れると強制的な排除が人道的に極めて難しいのは、在日韓国・朝鮮人を見ても明らかです。
治安回復の為のコストは膨大なものになる可能性があり、移民問題の解決について今欧州で見られるような極右台頭の可能性すらあります。正しく国家百年の計を考えて実施されるべき政策ではないでしょうか。

この問題についての私の提案は以下の四点です。

1. 定年性の廃止、年齢による就業差別の撤廃。
これは米国では普通に行われている事です。定年制や年齢による就業差別により働ける能力がある人、働きたい人が働けなくなってしまいます。これは徒に社会保険費用を増加させてしまうだけです。

2. 上記に合わせて、年金支給に関する所得制限、資産制限の設置。
労働人口の減少が明らかなんですから、社会保障の対象となる層は減らさざるを得ません。

3. 出産に対する税制上のインセンティブの付与。独身者に対する税制上のペナルティの追加。
これは労働力人口を増加させる為には必須であると思います。

4. 3.の一方で出産に関する所得制限を設けます。
これはシングルマザー等の増加による社会保障費の増加を圧縮する為の処置です。
シンガポールでは、第三子以上を出産する場合は一定所得水準以下の場合は税制上のペナルティを設けています。この結果、シンガポールの人種構成は独立後40年変化がありません。

<太田>
こんな類の話であれば、お二人とも本名を名乗られてもよさそうな気もしますが、ネチズンの世界は、面白いですね。

さて、お二人のお話をうけたまわっていると、まだまだ日本は縄文モードだな、とつくづく思います。グローバリゼーションの世の中、ヒトの面でもカネの面でもいつまでも鎖国状態が続くわけがない、続けられない、と早く悟っていただきたいものです。
あなたのEUの取り上げ方は極めて一面的です。EUはどんどん拡大しており、後進地域から先進地域へのヒトの流入=移民、は今後一層加速して行くことでしょう。
戦前の日本帝国にしても、戦時中の大東亜共栄圏にしても、EUの東アジア版の先取りだったという視点も必要です。

>一度移民を大規模に受け入れ入れると強制的な排除が人道的に極めて難しいのは、在日韓国・朝鮮人を見ても明らかです。

そもそも、どうして「強制的排除」をする必要があるのですか。在日の人々の戦後日本に与えた収支計算はどう考えても大幅なプラスだったと思います。日本帝国市民として彼らを戦前の日本が育て上げた成果でもあるのでしょう。その成果は良かれ悪しかれ、現在の朝鮮半島や台湾の人々の間でも受け継がれています。
移民を入れよう、入れる場合は旧日本帝国領域の人々を優先しよう、と私が主張しているのはそのためです。

最後に一言、私は社会政策の専門家ではありませんので、他の読者の方々の意見もぜひ拝聴したいのですが、移民の代替案としてあなたが提示された諸施策は、相互に矛盾するものが含まれているよう気がします。
(私は、日本はシングルマザー(ファザーもあってよろしい)が先進国中、異常に少なすぎると思っています。)
いずれにせよ、移民受け入れか否かにかかわらず、精査の上、小子化、女性問題対策等を講じていく必要があることは言うまでもありません。

(続く)