太田述正コラム#0271(2004.2.26)
<旧日本領からの移民受け入れの是非(その2)>

<読者D>
縄文モードとはどういう意味でしょうか?肯定的には受け取りにくい発言のように感じました。余計なお世話ですが、太田さんが落選されたのも、このような言い方をされてきたからではないかと思います。

> 日本は成熟した民主主義国家です。また、日本の市民の大部分は、日本が国際社会の希望を無視して行動するわけにはいかないことも自覚していると思います。経団連と国連(こちらはちょっと記憶が正確ではないのですが)は、それぞれ日本の世論と世界の声の有力な代弁者の一つです。日本の市民の多くが自分自身の利害と上記等の意見に照らして、早晩、常識的な結論に達するだろう・・そのことを希望している・・ということです。

私が言いたかったのは、人間が欲望を離れては生きられない存在であるならば、国連や経団連の構成員が自らの利益を度外視した主張をすることはないということです。太田さんや私の意見が絶対に正しいとは言えないように、彼らの意見も絶対に正しいわけではないということを、もう一度考えてみてください。

> 人間は環境の産物でもあります。蛇足ながら具体例を一つあげておきます。アラブ社会は、おしなべて専制的支配の下にあり、経済は停滞しています。アラブ社会の中で個人がその個
> 性を活かして活躍することは極めて困難です。

蛇足以下を読む限り、発想を持つことと、それを活かした活動ができる環境があるかどうかとは、別問題であることをご理解されていないように感じました。私は、発想とは個人の資質だと言っただけで、それが活かせる環境の有無までは言及しておりません。もう一度考え直してみてください。

> 移民大量受け入れに伴うコスト(例えば犯罪の増加)は、それほどではないかもしれない、ということです。良貨は悪貨を駆逐するからです。

つまり、不法滞在者をへらすために、日本は移民を受け入れた方がよいということですか?それが太田さんのいう安全保障ですか?

> おっしゃっている意味はもちろん分かっています。質(例えば生産性)を上げることと量(例えば販売高)の維持・拡大を図ることとの兼ね合いの問題です。一方だけでいいというわけにはいきません。しかも移民の大量受け入れは、日本の人的資源を量的に維持(或いは減少傾向を緩和する)することに資するだけでなく、その質的向上にも資する(金太郎飴的発想がなくなる)にも資する、という点が重要です。

私が申し上げているのは、官・民の構造改革をすすめると、移民に与える仕事が日本にはなくなるのでは?、ということです。この点について太田さんはご理解されていないように感じます。

> これは絶対論と相対論の兼ね合いの問題です。

これは絶対論と相対論の兼ね合いの問題であり、諸外国と比較することはあまり意味がないのでは?という意味を込めて「・・・という考えを導き出すこと"も"できます。」と申し上げたのです。そもそも、なぜ太田さんは諸外国との比較を持ち出したのですか?ご発言の趣旨がよく分かりませんでした。

> 総じて投稿子に申し上げたいことは、バランスのとれた、総合的な物の見方をしてください、ということです。

「縄文モード」やこのような発言を読む限り、率直に申しますと、太田さんは、官僚であったころの「過信」をいまだに引きずっているように感じます。

<太田>
>縄文モードとはどういう意味でしょうか?肯定的には受け取りにくい発言のように感じました。余計なお世話ですが、太田さんが落選されたのも、このような言い方をされてきたからではないかと思います。・・「縄文モード」やこのような発言を読む限り、率直に申しますと、太田さんは、官僚であったころの「過信」をいまだに引きずっているように感じます。

やれやれ、もう少し議論自体を楽しんでください。
プラトンの対話編をまだお読みでなかったら、一つでも二つでもいいので、読んで見てください。どんなに当時のアテナイの人々が議論を楽しんでいたかが分かりますよ。
それと同時に、プラトンの対話編の主人公であるソクラテスが、その言論をとがめられてアテナイ市民達によって死刑に処せられたことも思い出してください。
そして、現在の日本のように言論の自由がほぼ完全に保証されている社会に生きていることの幸せをかみしめてください。

縄文モードについては、コラム#116、#154、#159、及び#226を参照してください。機会があれば、縄文、弥生モードの議論をより詳細に展開したいと思っています。
意味が分からなかったら、質問すればいいのです。
分からないまま、勝手な思い込みをしないようにお願いしておきます。
いずれにせよ、私は縄文モードそのものに悪い意味は全く込めていません。現在の日本は、縄文時代、平安時代、徳川時代のそれぞれの「鎖国」期が成熟させて行った国風文化のたまものです。
しかし、現在のようなグローバライゼーションの時代にはもはや「鎖国」する贅沢は許されていない、というのが私の考えなのです。

私の旧日本帝国領の住民に日本への移住権を、という提案は、既にコラム#135でしています。
当時は全く反響がなかったのに、今度は大変な反響ですね。これは私のコラムの読者層が広がったためだ、とありがたく受け止めています。
ただ、できれば、感情的に反発されるだけではなく、なぜご自分が感情的に反発したのかをじっくり考える契機にしていただければありがたいですね。

<読者E>
縄文モードとは手厳しい限りですね。(^^;
根拠も説明されずに、そういうレッテルを貼るのは太田さんらしからぬ様に思います。

確かに物・金についてはグローバル化の時代ではありますが、人については、なかなか難しいものがあります。人は常により良い生活を求めるものです。ですから、今がそうである様に豊かに生活出来る可能性のある処に移りたいという希求がある点は良く理解出来ます。ただ、残念ながら現在は国民国家、民族国家の時代です。主権国家の枠は厳然として存在します。日本の様に単一文化国家の場合治安対策等の社会的なコストが非常に高くつく事はご理解頂けると
思います。
例えば、在日韓国・朝鮮人の23%は生活保護を受けており、この生活保護の費用だけで、平成15年度予算ベースで総額1兆5200円の約10分の1として年間約1500億円です。たった60万と言われる在日の生活保護費用にこれだけかかります。彼らは人口の0.5%しかおりません。
制限的にでも受け入れた場合、長期的には直接的な社会保障コストだけで日本人の25倍がかかる(日本人の生活保護率は0.9%)移民を、治安の不安もあるのに、何故に受け入れるのか極めて疑問です。グローバル化即ち善ではありません。
不法移民の増加に備える必要はあっても、移民を積極的に受け入れる理由はないというのが私の意見です。(数字の典拠:http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/2487/

ですから、移民なしで過ごさなければならない国力の低下等の苦痛があったとして、それを甘受するのも国民の選択であると思います。
昨今の外国人犯罪の増加により、国民の多くが不安を感じている点も合わせ、現時点で移民受け入れの社会的な合意は全くないものと考えます。

私は現在、米国に在住しておりますし、過去、シンガポールに住んでいた事があります。両国の移民政策について詳しい訳ではありませんが、両国共に移民を無制限に許容している訳ではありません。シンガポールは極めて厳しい不法移民の取り締まりを行っています。米国は元々移民の国ですから比較的寛容ですが、それでも、市民権取得はかなり困難です。現在は不法移民は別にして出身国別の年間割当が決まっています。

米国の場合はヒスパニック系の不法移民の人口が増加し、2001年で確か、黒人の人口を追い抜きました。また、政府・地方公共団体の広告は英語と共にスペイン語でも記載しなければならない事が義務付けられました。学校におけるESL教育も含め、これを米国の懐の深さと解釈するか、米国も苦労していると取るかは様々ですが、そういう事で社会的なコストが上昇する事実は変わりありません。
限られた予算を配分する上で新たな社会的なコストが発生すれば、それは、どこかで補填されねばなりません。太田さんはその痛みをどこに求められますか?

太田さんは、旧日本帝国領からの移民を自由化すべきという意見をお持ちですが、具体的には台湾と韓国・北朝鮮が対象になります。
太田さんのご意見を受け入れた場合、現在でも多くの課題を抱える在日問題を更に悪化させる懸念が高くなる様に思われますが如何でしょうか?またその場合、北朝鮮の崩壊により大量発生が予想される北朝鮮難民をどの様に取り扱われるおつもりでしょうか?

また、シングルマザーについての議論ですが、私の意見の出発点は、将来予想される高齢化社会に如何に対応するかという点にあります。
これについての基本的な方針は、手厚い社会福祉政策を取る事は、労働人口に高負担をかけ、経済全体の活力を失わせる。従って、社会福祉のレベルを国民が納得出きる範囲で落とさざるをえない。加えて、将来に備え健全な労働人口を増加させないといけないというものです。また、その手段の一つとして税制度を活用して誘導するというものです。

太田さんが矛盾するものが含まれる指摘されたのは以下の
4. 3.の一方で出産に関する所得制限を設けます。
これはシングルマザー等の増加による社会保障費の増加を圧縮する為の処置です。

と思いますが、やみくもに人口を増やせば良いというものではありません。生活保護を受ける家庭を減少させる即ち社会的な負担を軽減させる点から私は意味があると考えます。
私自身が子供を三人かかえ生活に四苦八苦している訳で、子供を育てるには相応の経済的な基盤が必須です。セイフティーネットとしての生活保護は必要ですが、貧困の再生産を防ぐ見地からも出産に関する所得制限は必要と考えます。
具体的には離婚による母子家庭は保護するが、未婚母子家庭の発生、生活保護世帯の出産は抑制するという事です。

シングルマザーについては色んな角度からの議論が可能ですし、現になされていますが、私の提案も国民経済的な見地からすれば、十分成り立ちうるものと考えます。

太田さんは「(私は、日本はシングルマザー(ファザーもあってよろしい)が先進国中、異常に少なすぎると思っています。)」と書かれていますが、私はこれは歓迎すべき点でありさえすれ変更すべき点とは考えておりません。

高齢化社会に対する解法として太田さんは、具体的な提案としては移民導入しか上げられておりません。それだけが処方箋であるとすれば、やはり極めて乱暴な提案と言わざるをえません。

<太田>
>在日韓国・朝鮮人の生活保護費用は、・・約1500億になります。

「在日韓国・朝鮮人」の中には日本に帰化した人々は入っていないのでは?
これらを全部カウントしたとして、彼らが払ってくれている税金の総額は、1500億円(という金額が正しいとしても)より相当大きいのではありませんか。

>太田さんのご意見を受け入れた場合、現在でも多くの課題を抱える在日問題を更に悪化させる懸念が高くなる様に思われますが如何でしょうか?またその場合、北朝鮮の崩壊により大量発生が予想される北朝鮮難民をどの様に取り扱われるおつもりでしょうか?

私は「在日」のコストよりベネフィットの方が上回っていると考えているので、お答えのしようがありません。
後段については、私は北朝鮮を崩壊させるためにも日本が難民(移民)受け入れを宣言すべきだ、という考えです。
実際に北朝鮮が崩壊した時には、当然、韓国等とも話し合って激変緩和措置を講じるべきでしょう。

>シングルマザー等の増加による社会保障費の増加を圧縮する

シングルマザー(ファーザー。以下同じ)が仕事をして収入を得る施策を講じる(そのためにも、保育園等で働く移民を受け入れるべきです)ことによって、生活保護費の増加を抑制することができます。また、シングルマザーの子供はやがて大人になって税金を払ってくれるようになるのですよ。大目的を達成するための一時的な社会的負担の増加を回避しているようでは
話になりません。

><日本で>シングルマザーが先進国中、異常に少なすぎる<ことについては、>私はこれは歓迎すべき点でありさえすれ変更すべき点とは考えておりません。

日本の女性問題の深刻さに完全に目をつぶった議論です。
先進国中最悪の差別構造の下、女性がフルタイムで仕事を続けること自体が困難な日本社会では、シングルであり続けざるを得ない女性が増える一方であり、せめてシングルマザーにはなりたいという希望者は沢山いても、シングルマザーになった瞬間、結婚を忌避してまで守ろうとした自分の仕事を失ってしまうという状況なのですよ。
女性問題は日本が人権後進国であることの端的な現れであり、由々しい問題であるという自覚をぜひ持ってください。
女性の読者の方、ご意見をぜひどうぞ。

>高齢化社会に対する解法として太田さんは、具体的な提案としては移民導入しか上げられておりません。それだけが処方箋であるとすれば、やはり極めて乱暴な提案と言わざるをえません。

私のホームページの主張(選挙に出たときのもの)をご覧ください。

(完?)